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リウマチ・関節センター【リウマチ・膠原病内科部門】

関節リウマチの新しい治療薬「プラリア®」について

この稿のまとめ

ここと、第3部の「プラリアによる治療の実際」を読んでいただくだけでも十分です。

プラリアの使用目的
  1. 関節破壊の進行による、患者さんの関節の機能の低下を防ぐ
  2. 骨折による、患者さんの全般的な機能の低下を防ぐ
1.関節破壊の進行による、患者さんの関節の機能の低下を防ぐ
<使用の対象となる患者さん>
  • 関節の破壊が進行するのを防ぐためには、関節の炎症を治療目標を達成するレベルまでに抑え込むことが必要です。
  • しかし、現実にはメトトレキサートなどの抗炎症療法によって治療目標を達成するには時間がかかり、達成不能の場合もかなりあります。この間に関節破壊が進行してしまいます。
  • とくに、予後不良因子をもっている状態の患者さんでは、関節破壊が進みやすいことがわかっています。
  • 予後不良因子は、以下の通りです。
    1. 血液検査で抗CCP抗体が陽性、またはリウマトイド因子が陽性、とくに高値である
    2. 関節の炎症が高度、つまり関節の腫れや痛みが強い
    3. 初期のころからレントゲンで骨のびらんを認める
    4. これまでの治療でなかなか関節の腫れや痛みがおさまっていない
<使用する時期>
  • このような患者さんでは、「関節の炎症が高度である時」に、治療目標を達成するまでの期間中に関節破壊が進行してしまうのを抑制する目的で、「プラリア」を使用することをお勧めします。治療目標を達成したら、「プラリア」は中止していただいて結構です。ただし、骨粗しょう症の患者さんの場合、「プラリア」は中止しないほうがよいでしょう。
  • 「関節の炎症が高度である時」は、二つのケースが考えられます。
    1. 発症早期の「抗炎症治療の導入期」
    2. いったん治療目標を達成し、その状態を維持していたけれども再燃してしまい、「抗炎症治療を再強化する時期」
2.骨折による、患者さんの全般的な機能の低下を防ぐ
<使用の対象となる患者さん>
  • 患者さんの全般的な機能の低下を防ぐためには、関節の炎症を抑えこむことだけではなく、骨折のリスクを減らすことが必要です。
  • 関節の炎症を抑えるだけでは、関節リウマチの患者さんの骨折を減らすことはできないことがわかっています。
  • とくに、以下のリスク因子をもっている状態の患者さんでは、骨折が起こりやすいことが知られています。
    1. 女性である
    2. 高齢である
    3. ステロイド剤を服用している
    4. 身体の機能の障害が高度、つまり運動ができず、骨への刺激が少ない
    5. 関節の炎症が強い
  • このような患者さんでは、リスク因子をいくつ充たすかを考えながら、「プラリア」を使用することをお勧めします。
<使用する時期>
  • この場合の使用は長期になります。継続年数や年齢の上限などについては、まだ検討の余地がありますが、10年以上使用した患者さんでの有効性と安全性のデータが「プラリア」にはあります。また、80歳以上の方に使用して有効であったというデータもあります。

はじめに

みなさん、こんにちは。この原稿を準備しているのは、冬の日のことです。とくに冬の雨の日や雪の日は、関節症状がいつもより悪化する場合もあり、体の不調に悩まされている方も多いのではないかとお察しいたします。
今回は、2017年7月に適応追加された関節リウマチの治療薬である、「プラリア」(物質名:デノスマブ)について、ご説明しようと思います。
「プラリア」は、すでに2013年6月に、「骨粗しょう症」の治療薬として承認されている薬剤です。6か月に1回の皮下注射で済みますので、薬をのむ手間も省け、飲み忘れることもない、便利な骨粗しょう症治療薬です。
今回、「プラリア」は「関節リウマチにともなう骨びらんの進行抑制」にも使えるようになりました。
本日は、この「プラリア」を「どのような患者さんに」そして「どのような時期に」使ったらよいかということを中心にお話ししようと思います。

第一部:「プラリア」使用の第一の意義

関節破壊の進行による、患者さんの関節の機能の低下を防ぐ

現在の関節リウマチの治療は、4つの階層に分かれています。
1階部分の最も基礎になるのが、「関節の炎症(痛み、腫れなど)を抑制すること」です。
1階部分の「炎症」が十分に抑え込めないと、より上層の「関節構造」に影響してきます。
それは、「炎症」によって、骨を破壊する「破骨細胞」が活性化したり、軟骨を破壊する「分解酵素」が作られるからです。
2階部分は、「関節の破壊、つまり骨や軟骨の破壊を抑制すること」です。
2階部分の「関節構造の破壊」が十分に抑え込めないと、3階部分に影響してきます。
3階部分は、「関節の機能の悪化を抑制すること」です。
3階部分の「機能の低下」が十分に抑え込めないと、4階部分に影響してきます。
4階部分は、「現在の家庭・社会生活を維持すること、生命の危険を回避すること」です。
これが治療の究極の目標です。

われわれは、1階部分の炎症を十分に抑制することで、2階、3階、4階に炎が燃え拡がっていかないようにすることを心がけて治療を行っています。
1階部分の炎症をどの程度までに抑えるべきか、つまり、治療目標をどの程度のところに置くべきか、についての取り決めが、2011年に欧州リウマチ協会と米国リウマチ学会が合同で発表した「寛解基準」です。この治療目標は、わが国での日常臨床にも取り入れられています。
「寛解基準」は、以下の4項目からなります。けっこう厳しい目標です。

  1. 圧さえると痛みを感じる関節の数が1か所以下
  2. 腫れている(水がたまっている)関節の数が1か所以下
  3. 血液検査で、CRPの値が正常値
  4. 患者さん自身の評価で、自分が最も悪いと考える状態の10分の1以下の状態

(ここでお断りしておきます。この目標は、関節リウマチを発症してから日時がまだ経過していない、早期の患者さんのために設定されたものです。発症してから長期間が経過し、一部の関節に変形があるような患者さんでは、痛みを感じる関節や腫れている関節の数は3か所くらいまで容認できるでしょう)

この基準をクリアできれば、現在の関節リウマチ治療の主力であるメトトレキサートによる治療で、2階の「関節構造の破壊」をほぼ防ぐことができます。
逆にいえば、①抗炎症治療による「炎症」の抑制の程度が、「寛解基準」をクリアするまでに至らない場合、あるいは②達成できたとしても、それまでに長い時間が経過してしまった場合には、「関節構造の破壊」が進んでしまう、ということになります。
では、メトトレキサートのみでの治療で、適切な期間のうちに「寛解基準」をクリアできる可能性はどのくらいでしょうか。おそらくは、5~7割程度でしょう。関節炎症の強さが強いほど、目標をクリアできる確率は低くなり、関節破壊が進行する確率は高くなっていくでしょう。

治療ガイドラインでは、メトトレキサートのみで、半年くらいで治療目標を達成できない場合は、「原則として」生物学的製剤やJAK阻害薬を導入することになっています。ここで、「原則として」と書いたのは、現実には治療にかかる費用の面で、生物学的製剤やJAK阻害薬には高いハードルがあるからです。
平均的な3割負担の患者さんで、1か月の費用負担は、生物学的製剤の場合が2万3000円から3万9千円くらい、JAK阻害薬が4万7千円となります。しかも、これらの薬剤は治療目標達成後も、中止できるとは限らず、長期にわたって続けなければならないかもしれません。その費用負担は大きなものになります(とはいっても、これを使って現在の生活を継続できるようになる意義は、何物にも代えがたいものであります)。
高額な治療費のために、これらの薬剤を導入せずに時日を過ごしてしまうことも、けっしてまれなことではありません。

この、「治療の遅れ」は重大な問題なのです。
関節リウマチでは、関節の構造の破壊は、発症してからの初めの2年間が最も進行が急速だということがわかっています。生物学的製剤が高額であるために導入をためらって時日を過ごしてしまいますと、もっとも破壊を抑制すべき大切な時期を逃してしまうことになりかねません。

こういう時期に、関節の骨の破壊を防止するために、1か月1400円の費用で使える薬剤が「プラリア」なのです。
「プラリア」と「生物学的製剤」の関節破壊を抑制する作用を比べてみましょう。

まずは、「生物学的製剤」からです。メトトレキサートに生物学的製剤を追加しますと、2階部分の「関節構造の破壊」を抑制できる可能性は大きく向上します。
なぜでしょうか?
それは、「生物学的製剤は、1階部分の炎症を抑制する作用だけでなく、2階部分の関節構造の破壊をダイレクトに抑制できる作用も併せ持っている」からです。

2階部分の関節構造の破壊、とくに骨の破壊の主役は、「破骨細胞」です。破骨細胞が活性化すると、周辺の骨を吸収していきます。関節においてこの骨吸収が進行すると、われわれがレントゲン像でみる「骨びらん」となるのです。
生物学的製剤は、製剤によってその機序は様々ですが、「破骨細胞」の活性化を抑制する作用をもっていますので、メトトレキサートよりも2階部分の関節破壊を抑制する効果が高いのです。

今度は、プラリアです。 「プラリア」は、この「破骨細胞」の活性化を抑制する「専門家」です。
「破骨細胞」を活性化する因子の主役は「RANKL」という分子です。投与された「プラリア」は、患者さんの体の中で、この「RANKL」だけに結合し、「RANKL」が作用を発揮できないようにします。
「RANKL」がなければ、「破骨細胞」の活性化はわずかなレベルにとどまります。このようにして、「プラリア」は「破骨細胞」の働きを抑制するのです。

つまり、「プラリア」は、1階部分の関節の「炎症(痛み、腫れなど)」を抑制することを介さずに、ダイレクトに2階部分の「関節の骨の破壊」が進んでいくのを食い止める薬なのです。
「プラリア」による、関節の骨の破壊を抑制する効果は、イメージとしては「生物学的製剤と同等」といえるでしょう(患者さんの背景を揃えているわけではないので、あくまでもイメージですが)。

ただし、2階部分の「関節破壊、とくに骨破壊を抑える専門家」ということは、1階部分の炎症は抑えないということでもあります。
したがって、プラリアだけでは「関節の痛みや腫れは改善しません」。
そのため、「プラリア」は、メトトレキサートなどの抗炎症治療薬と必ず一緒に使います。「関節破壊抑制効果」と「抗炎症(痛みや腫れを改善させる)効果」のそれぞれの特性を補い合うということです。

「プラリア」を使うべき時期はこれでおわかりでしょう。
抗炎症治療によって治療目標を達成するまでの期間中(1階部分の炎症がまだ十分に抑えられていない時期)には、2階部分の関節破壊が進行するリスクがありますから、「プラリア」を併用して、2階部分をダイレクトに抑えます。
その後、治療目標を達成できたら、その後の関節破壊の進行リスクは少ないので、「プラリア」は中止します。
治療目標をいったん達成した後で、関節の炎症の勢いが再び強くなった場合(再燃時)も、同様のやり方で「プラリア」を併用します。

「プラリア」中止によって、一時的に骨粗しょう症が悪化する可能性があります。この後第二部で述べますように、骨折リスクの高い、骨粗しょう症を合併している患者さんの場合には、「プラリア」は中止しないほうがよいでしょう。

とくに、「プラリア」をお勧めすべきなのは、どのような患者さんでしょうか。
関節の破壊が進行しやすいのは、どのような因子を持つ患者さんであるかは、すでにわかっています。このような因子を、「予後不良因子」といいます。
予後不良因子は、以下のようなものです。

  1. 血液検査で抗CCP抗体が陽性、またはリウマトイド因子が陽性、とくに高値である
  2. 関節の炎症が高度、つまり関節の腫れや痛みが強い
  3. 初期のころからレントゲンで骨のびらんを認める
  4. これまでの治療でなかなか関節の腫れや痛みがおさまっていない

これらの因子のうちで、あてはまる数が多いほど、関節破壊が進行する確率が増すことがわかっています。
このような場合は、「プラリア」を併用することを念頭に置いて、治療にあたる必要があるでしょう。
実際に、抗CCP抗体が陽性の患者さん、そしてリウマトイド因子が陽性の患者さんで、「プラリア」を使うと、使わなかった場合よりも統計学的に有意に骨破壊が抑えられたことが治験データで示されています。

「プラリア」の使い方のイメージがわかっていただけたでしょうか。

第二部:「プラリア」使用の第二の意義

骨折による、患者さんの全般的な機能の低下を防ぐ

「プラリア」はすでに4年以上も骨粗しょう症の薬として使用されていますので、この部分に関しては簡単に触れるにとどめておきます。

患者さんの全般的な機能の低下を防ぐためには、関節の炎症を抑えこむことだけではなく、骨折のリスクを減らすことが必要です。
実際に、関節の炎症を抑えるだけでは、関節リウマチの患者さんの骨折を減らすことはできないと報告されています。
いろいろな報告がありますが、「生物学的製剤を使っていたとしても、骨折のリスクは使っていない患者さんと同等であり、骨折が減るわけではない」というのが、一番印象的でしょうか(Arthritis Care & Research 2013;65:1085)。
やはり、「プラリア」のような骨粗しょう症治療薬を併用することが必要だというわけです。「プラリア」なら、上に記しましたように、関節の骨の破壊も抑えてくれますので、一挙両得です。

関節リウマチの患者さんでは骨密度の値がよくても骨折のリスクがあることが知られています(もちろん、骨密度の値を無視するものではありませんが)。関節リウマチという病気自体が、骨折のリスクを高めてしまうのです。

関節リウマチの患者さんの中でも、どういう患者さんに骨折が起こりやすいか、つまり、骨折のリスク因子は何か、ということはすでにわかっています。
関節リウマチ患者さんでの骨折のリスク因子は以下の通りです。

  1. 女性である
  2. 高齢である
  3. ステロイド剤を服用している
  4. 身体の機能の障害が高度、つまり運動ができず、骨への刺激が少ない
  5. 関節の炎症が強い

このような患者さんでは、リスク因子をどれくらい充たすかを考えながら、「プラリア」を使用することをお勧めします。

この場合の「プラリア」の使用は長期になります。使用を継続すべき年数・条件や、年齢の上限、などについては、まだ検討の余地がありますが、10年以上使用した患者さんでの有効性と安全性のデータが「プラリア」にはあります。また、80歳以上の方に使用して有効であったというデータもあります。

第三部:「プラリア」による治療の実際

ここの部分は、第一三共株式会社が作製した患者さん向けパンフレットを参考にしています。

プラリアの投与方法

「プラリア」は注射のお薬です。皮下に注射する薬です。
注射の間隔は、6か月に1回です。これでも骨の破壊が進行するような場合には、3か月に1回に注射の間隔を短縮することが認められています。

プラリア投与中の注意
1.以下のような症状があらわれた場合は、次の受診日を待たずに、すぐに医師にご連絡ください。
  • 手足のふるえ
  • 筋肉の脱力感
  • けいれん
  • しびれ

これらは、血液中のカルシウムが少なくなったときの症状です。体の中のカルシウムの供給源は骨です。破骨細胞は、骨からカルシウムを「削り取って」、体の必要をみたしています。プラリアは破骨細胞の働きを抑えますので、カルシウム不足になる可能性があります。
しかし、3.の項で述べますように、カルシウムとビタミンDを適切に補充していたら、カルシウム不足になることはまずありません。

2.以下のような症状が現れた場合は、次の受診の日を待たずに、医師、歯科医師にご相談ください。
  • あごの痛み
  • 歯のゆるみ
  • 歯ぐきの腫れ など

まれではありますが、顎膿瘍、顎骨壊死といわれる病態が起こる可能性は否定できません。

このリスクをどのように考えるかということに関して、米国内分泌学会の秀逸なたとえ話があります。

  • 骨粗しょう症の薬剤によって骨折を減らせる割合は、シートベルトによって事故時の死亡やけがを減らせる割合と同一です
  • 骨粗しょう症の薬剤によって顎骨壊死という不利益が起こる割合は、装着時など、シートベルト自体でけがなどの不利益を起こす割合と同じくらいの稀なものです
  • 車に乗ったときに事故による受傷のリスクを優先してシートベルトをするように、骨折のリスクがあるときに骨粗しょう症の治療薬を服用することは、合理的な選択です
顎骨壊死の予防の対策としては、以下のことが挙げられます。

  1. 定期的に歯科医のチェックを受けるなど、口腔の衛生に心がける
  2. 抜歯などの骨を触る処置の時は抗菌剤を使用する
  3. 骨を触る処置の場合、可能であれば処置の後で骨が露出した状態にならないようにする
  4. 骨を触る処置については、「プラリア」の投与後6か月以上たってからにする

同じ注意は、骨粗しょう症の治療で広く用いられている、「ビスフォスフォネート」というグループの薬剤でも必要です。ただし、「ビスフォスフォネート」の場合は、服用の中止後も何年も体内にとどまりますが、「プラリア」は6か月でほぼ体内から消失しますので、「プラリア」のほうがずっと対応しやすい薬剤といえるでしょう。

3.プラリアを投与されたら、毎日、カルシウムとビタミンDを服用してください

ビタミンDは血液中のカルシウムを増やす働きがありますので、これを服用することによって、「プラリア」でカルシウムが減ってしまうことを予防できます。
薬以外の手段で、ある程度カルシウムがとれている人の場合は、「活性型」ビタミンD製剤の服用だけでもカルシウムの低下は予防できますが、ケースバイケースですので、主治医とご相談ください。
何らかの理由によって、血液中のカルシウムが過剰に多くなっている人の場合は、カルシウムやビタミンDの服用が必要ないこともあります。これもケースバイケースですので、主治医とご相談ください。

「プラリア」は、以下のような人には使用できません
  • これまでに、「プラリア」、「ランマーク」に対して過敏な反応を起こしたことがある人
  • 血液中のカルシウムの値が低い人
  • 妊婦または妊娠している可能性がある人

プラリアは6か月で体内からほぼなくなりますので、投与後6か月以上経過していたら、妊娠には問題ないでしょう。

「プラリア」は以下のような人には、リスクとベネフィットを考慮して、慎重に使用する必要があります
  • 血液中のカルシウムの値が低くなる可能性のある人
  • 重度の腎機能の障害のある人

腎臓の機能が悪いと、血液中のカルシウムの値が低くなる可能性があります

おわりに

いつもながら、まわりくどい話になってしまって申し訳ありません。
それでも、この稿によって、「プラリア」をどのように使えば、生活のクオリティを維持・向上させられるのか、おぼろげにでも理解していただけましたら、筆者にとってはこれほど嬉しいことはありません。お読みいただいてありがとうございました。

独立行政法人国立病院機構 宇多野病院
統括診療部長 柳田 英寿