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脊椎・脊髄外科センター

脳の仕組み

硬膜、クモ膜、軟膜

硬膜、クモ膜、難膜脳は頭蓋骨に囲まれた密室の中にあります。頭蓋骨を開けてみますと、膜が3つあります。硬膜、クモ膜、そして軟膜です。
硬膜を開けてみますと薄いヴェールのようなクモ膜を透かして脳が見えます。(手術ビデオ供覧)。動脈の拍動で脳自身も拍動して見えます。よく観察すると、血管の拍動に加えて呼吸による脳の拍動も分かります。クモ膜を切りますと脳脊髄液が流れ出てきます。クモ膜と軟膜の間のクモ膜下腔には脳脊髄液が流れていて、脳を洗ってくれています。

太い動脈や静脈はこのクモ膜下腔に存在し、動脈の瘤が破裂しますとクモ膜下出血をきたします。例えば血圧が200mmHgなら2m60cmの水圧と同じ高い圧力ですから、一瞬の内に血液が脳全体をおおいつくします。この出血が止まるのは脳圧と血圧が等しくなった時です。頭蓋骨に囲まれた密室の中で脳圧はどんどん上昇し、圧力の逃げ場は頭蓋骨のないところ、つまり延髄の通るところへ小脳がおち入み延髄を圧迫、呼吸が止まります。これを脳ヘルニアと言います。

脳治療の原点は、この脳ヘルニアをすばやく察知し、延髄への圧迫が起こる前に脳圧をコントロールすることにあります。時間と一瞬の判断が大事になってきます。

脳の機能

ホムンクルス脳には機能が局在しています。例えば左の前頭葉の運動領がやられますと、右手足の麻痺と失語症;言いたいのに言えない、声が出ないという症状がでます。(ホムンクルス図参照)。 逆に考えますと、右足と左手がやられるということは一元的には考えにくく、多発性の障害があるかあるいはヒステリー;詐病かということになります。いろんな症状を詳しく調べると連立一次方程式を解くように、簡単に脳の障害部位が分かります。

先程の(硬膜、クモ膜、軟膜のページ)脳ヘルニアをいち早く診断する上で、呼吸のパターンによっても脳のどこが傷害を受けているのかが分かります。

大脳半球がやられますと反対側の胸壁の運動が低下します。両側のオペルクルムというところがやられますと周期的に咽頭が麻痺して、無呼吸や気道閉塞をきたします。
間脳;ちょうど脳の真ん中にある視床などがやられますとチェーンストークス呼吸となり、大きな呼吸と20-30秒間続く無呼吸の繰り返しが起こります。
さらに下の中脳がやられますと今度は過呼吸となります。
その下の橋になりますと呼吸をしているのかしていないのかという状態になり、延髄がやられますと失調性呼吸から呼吸停止にいたります。

脳脊髄液の働き
脳脊髄液の動き

頭蓋骨の中には脳と血液と水=脳脊髄液が入っています。脳脊髄液は脳室内の脈絡叢で造られ、脳表のクモ膜下腔へと流れ出て、最終的には脳のてっぺんにある上矢状洞という静脈に入り、血液として循環しています。
1日に450ml産生されますが、クモ膜下腔全部の容積は150ml程度ですから1日に3回は入れ替わっている計算になります。川の水が海へと流れるように、脳脊髄液もまたずっとそこにとどまることなく常に流れているのです。

人間の体はいつも今ある状態を維持していますが、維持をささえているものは常に新しいものなのです。例えば腸の細胞は生まれて24時間で死んでいきますが、腸は同じように働いています。皮膚も血管も全て同じに見えても中身の細胞は入れ替わり、新陳代謝をしているのです。

生命の営みは神秘的で、時間の感覚をもってダイナミックに眺めてみると感動します。シェークスピアも「人間とは何たる造化の妙」と感心していますが、同じ水のように見えてもさっき見た水はもう流れ去り、新しい水がそこにはあるのです。

少し脱線しましたが、脳脊髄液の働きは老廃物を心臓に送り返し、ショックアブソーバーとして、いざという時脳圧をコントロールする役目を持っています。

万能幹細胞

パンダの赤ちゃんはとても小さくて、母親の体と比べると信じられない小ささですが、人の胎児もそうです。子宮の中で、父親の精子と母親の卵子が癒合し一つの細胞となり、分裂し、平面的に伸び、その紙が円柱を形成し、中枢神経が作られていきますが、3週目の胎児はいまだ3mm程度です。

脳室のすぐ外にどんな細胞にもなれる万能幹細胞があります。胎生8日目までに幹細胞は外に伸びていき足場を作ります。その足場をモノレールのように走って脳表で神経細胞に成長します。胎生11日目には若い血管が外から脳内に入り込み、脳室へと向かいます。胎生13日目までには幹細胞はグリア細胞へと分化していきます。神経細胞は、軸索という足を伸ばし自分のペア;相手を探し、こいつとなら上手くやっていける;シナプスを作れるとなると、生き残れますが、シナプスを作れないと自ら自殺してしまいます。相手を見つけられない神経細胞は自殺するようにDNAの設定がされています。

ですから中枢神経発生の過程で何億という神経細胞は死んでいきます。このように全ての生命現象をダイナミックに時間の感覚をもってとらえると、生きていることの神秘性、偶然性に出会います。

母親の子宮の中で胎児は丸くなり、喉と性器が接していたと考えられます。腕と脚が大きくなり、顔と脚が離れて丸い蛍光灯が直線状の蛍光灯になったのではないかと想像されます。機能の局在かと発生を組み合わせると人の進化の歴史を追体験できます。紙のような神経板が内にまくれこんで神経管を形成、これが輪を作って肥大化したわけですから内と外、右と左が交差するようになっています。ですから右の脳が傷害されると左半身に症状がでます。

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