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神経内科

重症筋無力症関連最新情報

平成20年5月15日から3日間、横浜で第49回日本神経学会総会が開催されました。一日目のランチオンセミナーで当院小西院長が「重症筋無力症におけるネオーラルの治療経験」について宇多野病院での良好な実績を報告しております。学会を含めてこれまで報告されている重症筋無力症(MG)関連の最新の内容を追加しました。
(以下重症筋無力症をMGと表現します。)

MG疫学研究結果

2006年に免疫性神経疾患に関する調査研究班と特定疾患の疫学に関する研究班が合同で、国内のMG有病率を調査しました(吉良班長、九州大学神経内科教授)。

その結果MGの有病率は10万人に対して11.8人(全国で推定15100人)の患者さんがおられることが判明。約20年前(1987年)の全国規模の調査に比べ有病率では約2倍、推定患者数では2.5倍に増加し約10歳平均年齢が高齢化していました。

また発症年齢の検討では少子高齢化のために小児MGの減少があり、年令補正後でも65才以降の高齢者での発症者が約2.5倍増加し、特に50歳以降の高齢発症MG患者さんの増加が全体の数を増やしていることが明らかになりました。何故50歳以上の高齢者でMGが増えているのかは、今後の調査結果の詳細な検討が必要ですが、海外においても同様に50歳以上の高齢MG患者さんが増加しているとの報告があり、我が国においても類似の傾向を示しております。

高齢発症MG患者さんの増加の原因は不明ですが、高齢に伴う免疫系の異常や環境因子の影響が想定されております。

胸腺摘除術前のステロイド薬服用の是非

これまで胸骨縦切開による拡大胸腺摘除術が胸腺腫の有無にかかわらず、若年発症のMG患者さんで行われております。手術前のステロイド薬使用の是非については結論がでておりませんが、これまでの報告などから、術後クリーゼが予想される重症の方には術前ステロイド薬が勧められますが、軽症な方は副作用が無視できない術前ステロイド薬は服用していないのが現状です。

ステロイドは色々な副作用があって必要のない方までも術前に服用することには反対する施設が多く、宇多野病院も軽症者には術前ステロイドは用いません。今後エビデンスにもとずく、術前ステロイド薬服用が必要な患者さんの選択基準作成が必要です。

手術術式

従来から胸骨縦切開による拡大胸腺摘除術(最初に提唱された阪大の正岡先生の名前から正岡式手術と呼ばれます)と、患者さんの負担の少ない胸腔鏡下(内視鏡を用いて)での胸腺(腫)摘除術との割合は、内視鏡手術が手術全体の約1割を占めています。

内視鏡下での手術には術者の経験が必要ですが、宇多野病院では京都市立病院大迫胸部外科部長、城戸元大阪警察病院胸部外科部長と連携をとって、特別な問題がなければ内視鏡下での胸腺摘除術を行っています。

内視鏡下の場合は、術後合併症がなければ7日から10日程度で退院となり、早期に社会復帰が可能で、従来の拡大胸腺摘除での1から2ヶ月の入院期間とくらべると患者さんへの負担が軽減されます。

免疫グロブリン静注療法

MG治療ガイドラインに記載されている、免疫グロブリン静注療法は未だ保険適応がなく、現在国内において臨床治験が進行中です。ある程度以上のMG症状があって、現在の治療で日常生活でお困りの患者さんの中でこの臨床治験に興味を持っておられる方は宇多野病院の外来でご相談ください。

臨床治験については、株式会社 ベネシス 臨床試験情報のホームページを参照ください

タクロリムス(プログラフ)

2000年に保険適応がされて胸腺摘除後の患者さんに多く使用されております。現在二重盲検比較試験が進行中で近いうちにキーオープンがされる予定で、その臨床効果の有効性の根拠(エビデンス)が示されることが期待されています。

副作用として糖尿病に注意が必要です。千葉大学神経内科から、患者さんの爪からプログラフを代謝する酵素の遺伝子タイプから、血中濃度の予測が可能で、血中濃度が低い方は代謝酵素活性が高い方で、服用量を増やしても濃度が上がらないことがわかりました。しかし、血中濃度だけで有効性の判定にはなりません。

シクロスポリン(ネオーラル)

今回の学会発表では、2006年使用可能となったネオーラルの使用経験の発表がいくつか見られました。

現在のネオーラルの使用ガイドラインでは、体重(kg)当たり5mgで服用開始が勧められていますが、その場合ほとんどの患者さんの血中濃度が200ng/mlを超えてしまうことが明らかになりました。宇多野病院から、糖尿病を合併する高齢MG患者さんには3mgから開始する方が、検査値異常が見られず安全であるとの結果がでました。またプログラフで効果がない場合にネオーラルにしてよかった、あるいは逆の場合も考えられます。

ネオーラルの副作用としては、腎機能障害、高血圧、糖尿病、多毛、歯肉増殖などがあります。それぞれの薬物の安全な使用方法や副作用を十分理解されて服薬されるのが一番と考えます。 

これら治療法の詳細やセカンドオピニオンをお聞きになりたい患者さんは、小西(火、金)、田中(水、金)、松井(火)の神経内科外来での受診予約をお勧めします。

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