page top

炎症性筋疾患

炎症性筋疾患の病型

小児、および成人の治療によく反応が見られる筋肉の疾患のうち、最も多くを占める疾患群です。
臨床病理学的特徴により、主に4つの病型に分けられます。

  • 皮膚筋炎
  • 多発筋炎
  • 壊死性自己免疫性筋炎
  • (特発性)封入体筋炎

炎症性筋疾患の一般的な特徴

手足の筋肉のうち、胴体に近い部分の筋肉(近位筋)を使用した仕事がしにくくなります。例えば、椅子から立ち上がる、階段を昇る、ものを持ち上げる、など。
筋肉痛や筋肉をつかまれると痛い(把握痛)が起こることもあります。

しかし例外的に、封入体筋炎では、病気の初めの時期より、遠位筋(手足の筋肉のうち手先、足先に近い部分の筋肉)を使った仕事(ボタンを留める、ものを手に持つ)が、しにくくなります。眼を動かす筋肉(眼筋)は、通常侵されませんが、顔面の筋肉(顔筋)は、封入体筋炎でしばしば障害されます。頚(くび)を持ち上げる筋肉と、喉(のど)の筋肉(咽頭筋)が障害されるため、頭部が垂れ下がったり、ものの飲み込みの障害(嚥下障害)が起こります。
筋肉のやせ(筋萎縮)は、封入体筋炎で早期からみられ、特に太ももの筋肉(大腿四頭筋)と指を曲げる筋肉で起こりやすい特徴があります。

進行期や、まれに急に病気が出た場合に、呼吸をつかさどる筋肉が障害されます。 また、筋肉以外の症状もみられます。(封入体筋炎ではまれです。) 発熱、関節痛、レイノー現象(手先や足先の血管が縮んで、指先が真っ白になる)があります。(特に、抗合成酵素症候群の患者に多いと言われています。) 不整脈や心臓の機能障害などもおこることがありますが、それによって症状が現れるということはまれです。 間質性肺炎という特殊な肺炎が、10〜40%でみられると言われています。 (高分解能CT検査を行うと、抗ARS(抗Jo-1)抗体、MDA–5(anti–melanoma differentiation–associated protein-5)抗体症候群の患者において、70%の高頻度でみられます。)

病型別の特徴

皮膚筋炎

小児、成人にみられます。筋力低下に先だって、皮膚の症状が最初に起こることがあります。

<皮膚症状>
  • 眼周囲のヘリオトロープ疹:特徴的な紅斑(赤い斑点)が、顔面、膝、くるぶし、首から胸にかけて(前胸部)、背中、肩にみられます。
  • ゴットロン丘疹:手の甲に紫色の皮疹

これらの皮膚病変は、光に過敏性を持っており、紫外線を照射すると悪化します。
その他には、爪(つめ)の根元の部分(爪床基部)の毛細血管の拡張、爪の甘皮(爪の根元の薄い皮)の肥厚、ひび割れた手指(機械工の手)が特徴的です。
皮下組織に石灰化が起こると、時に皮膚表面に飛び出たり、潰瘍や感染の原因となります。
これは、特に小児でみられやすいとされます。

筋力低下がない場合には、皮膚限局型皮膚筋炎(amyopathic dermatomyositis)と呼ばれます。しかし、皮膚限局型皮膚筋炎でも、軽微な筋障害が存在することが多いです。
一方で、皮膚筋炎の症状は、全身性硬化症や混合性結合組織病と合併することもありますが、その場合には皮膚症状は一過性か軽度にとどまります。

小児例では、早期の皮膚症状は比較的強くみられ、その他に、顔面の紅潮を伴うイライラ感や、疲労感、学校生活に参加できない、など多彩な症状がおこります。

<皮膚筋炎に関連する抗体>

核RNA、または細胞質抗原に対する自己抗体は、(対象となる症例群、および使用される検出方法に応じて変化しますが)炎症性筋疾患患者の60%にまで検出されます。これらの抗体には、アミノアシルtRNA合成酵素(ARS)に対するものが含まれており、20〜30%の患者で検出されます。同定された8種類のARSの中で、抗Jo-1抗体が全体の75%を占めます。
その他に、抗Mi-2抗体は典型的な皮膚病変に関連するとされます。抗MDA-5抗体は、主に筋症状を伴わない皮膚筋炎(CADM)、または間質性肺疾患に関連して出現します。抗TIF-1γおよび抗核マトリックスタンパク2(抗NXP-2)抗体は、がん関連性の成人皮膚筋炎の患者に通常認められます。

<皮膚筋炎と癌のリスク>

成人では、癌のリスクが皮膚筋炎発症から3〜5年の間に増加し、その頻度は9〜32%と報告されています。卵巣癌、乳癌、大腸がん、悪性黒色腫、頭頚部がん(アジア人)、非ホジキンリンパ腫の頻度が高く、皮膚筋炎発症から3年間は、年1回の全身の詳しい検査が必要となります。

多発筋炎

多発筋炎は、比較的稀な疾患ですが、しばしば間違って診断されてしまうため注意が必要です。
過去に多発筋炎と診断された患者の多くは、現在では、封入体筋炎や壊死性自己免疫性筋炎や炎症性ジストロフィーであることが多いと考えられています。
亜急性の近位筋障害を有する成人例のうち、皮疹がないこと、神経筋疾患の家族歴がないこと、筋障害を引き起こしやすい薬剤(スタチン、ペニシラミン、ジドブジン)の服用歴のないこと、顔面筋や眼を動かす筋(外眼筋)の障害がないこと、ホルモン分泌機能の障害がないこと、などが特徴となります。

壊死性自己免疫性筋炎

多発筋炎よりも頻度が高く、全ての炎症性筋疾患の19%を占めます。全ての年代に起こりますが、主に成人にみられます。
急性に発症し、数日〜数週間で症状がピークに達する場合と、数ヶ月にわたって徐々に進行して、高度の筋力低下と血清CK値の上昇が起こる場合があります。
風邪などのウイルス感染症が発病に先立って起こることがあります。癌や強皮症などの膠原病に合併したり、筋障害を引き起こしやすい薬剤(スタチン:コレステロールの薬)の内服中に起こりやすいという特徴があります。スタチン製剤を中止した後も、しばらく病状の悪化が続きますが、4〜6週以内に病状が改善した場合には、薬剤性筋障害の可能性が高いと考えられます。
多くの患者で、SRP(signal recognition particle)抗体や抗HMCGR (3-hydroxy-3-methylglutaryl–coenzyme A reductase)抗体が検出されます。
抗HMGCR抗体は、スタチンの使用に関係なく、壊死性自己免疫性筋炎の患者の22%にみられ、筋力の低下と血清CK値上昇に強く関連しています。

封入体筋炎

最も頻度が高く、日常生活動作を障害しやすい炎症性筋疾患です。
50歳以上に起こりやすい病気です。病気の始まりに気づきにくいことが多く、何年にもわたり病状が進行してから診断されることもあります。
時に、左右非対称(片手あるいは片足にまず病気が出現する)のこともありますが、一般には左右同程度に病気が起こります。
筋ジストロフィー(高齢発症)や緩徐進行性の運動ニューロン疾患(筋萎縮性側索硬化症)と見分けるのが難しいことがあります。
多発筋炎と診断されたけれども治療に反応しない、という場合には、封入体筋炎を疑います。

早期の診断につながる特徴として、以下の点が挙げられます。

  • 遠位筋(手足の筋肉のうち体から遠いところ、手先足先に近いところにある筋肉)の障害
    特に足関節の伸展筋(足首を伸ばす筋肉)、手指の屈筋(指先を曲げる筋肉)の早期からの障害
  • 前腕および大腿四頭筋の筋萎縮
  • 膝折れによる頻回の転倒

病気の進行とともに、体幹筋も侵され、腰曲がりや首下がりを来します。顔面筋の筋力低下も軽度みられます。嚥下障害(飲み込みの障害)も半数以上で起こります。
近年、抗サイトゾル5'-ヌクレオチダーゼ1A(抗cN1A)が、封入体筋炎の患者の60〜70%において検出されることが判明し、注目されています。

炎症性筋疾患の診断

病気の進行のしかたがどんな様子か、障害がある筋肉の部位がどこか、検査結果(血清CK値、針筋電図検査、筋生検)はどうか、ということが正確な診断を行うためには必須となります。

  • 障害がある筋肉の部位がどこか:亜急性の近位筋の筋力低下がみられる場合は、多発筋炎や壊死性自己免疫性筋炎を考慮します。遠位筋の場合には、封入対筋炎を疑います。
  • 血清CK値:全ての病型において上昇しますが、とくに疾患活動度が高い場合に上昇します。病初期からの高値(正常上限の50倍以上)となる場合には、壊死性自己免疫性筋炎の可能性を考えます。一方、皮膚筋炎、活動性の封入体筋炎では、正常か、わずかな上昇(正常上限の10倍以下)にとどまります。
  • 針筋電図検査:筋肉に針を刺して、筋肉の反応をみます。神経が障害される疾患を除外したり、病気が活動性か慢性経過であるのかを判定するのに有用です。筋障害時には、特徴的な所見(short-duration, low-amplitude polyphasic units, 安静時活動であるfibrillations, complex repetitive discharges, positive sharp wavesの増加)を示します。
  • 筋MRI検査:筋肉内の浮腫、筋肉や筋膜の炎症、脂肪組織への変化、線維化、萎縮を確認するために用いられます。また、封入体筋炎で障害されやすい筋肉の萎縮を確認し、筋生検の部位決定の際に有用となります。
  • 血液中の自己抗体検査:壊死性自己免疫性筋炎の診断や、全身臓器の障害(間質性肺炎など)をみる上で有用となります。
  • 筋生検:局所麻酔下に皮膚を切開して、少量の筋肉を採取し、検査室で調べます。この検査により、病型を明らかにすることができます。必ずしも、典型的、特徴的な結果が得られるとは限りませんが、最も重要な診断方法です。
    特に、多発筋炎、壊死性自己免疫性筋炎、封入体筋炎の診断の際には不可欠です。また、筋ジストロフィー、代謝性筋疾患、空胞型ミオパチーのような、よく似ている他の病気を除外するのにも必要となります。

炎症性筋疾患に対する治療

皮膚筋炎、多発性筋炎、および壊死性自己免疫性筋炎の治療

ステロイドホルモンによる治療が、第一選択となります。
(体重1kgあたり1mgのプレドニゾロンを内服(1日1回朝食後)します。
症状が急速に悪化している場合には、メチルプレドニゾロン点滴(1日1g、3〜5日間)治療をまず開始し、内服治療を引き続き行います。その数週間後、治療への反応によって、プレドニゾロンの内服量を徐々に減量します。その際は、連日投与から隔日投与への切り替えが好ましいとされています。

治療初期から免疫抑制剤を併用する場合もあります。ステロイドホルモン剤に反応を示す患者では、免疫抑制剤としてはアザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、メトトレキセート、またはシクロスポリンが、ステロイド投与を減量するために一般的に使用されます。間質性肺疾患を併発する場合には、シクロホスファミドまたはタクロリムスが有効です。皮膚筋炎の患者では、短期的なステロイドホルモン、またはカルシニューリン阻害剤(シクロスポリン、タクロリムス)の投与と、日光を避けることが推奨されます。

ステロイドホルモン療法により寛解しない症例や、重症かつ急速に進行する症例では、免疫グロブリン静脈内投与(2g/kg、2〜5日間連続投与)が推奨されます。

難治性皮膚筋炎や多発性筋炎および壊死性自己免疫筋炎に対しては、免疫性グロブリン静脈内投与の有効性が過去の研究で示されています。

また、ステロイドホルモンや免疫グロブリン療法に抵抗性の場合には、病気の再検査を行い、場合によっては筋生検の再検を考慮する必要があります。

他の免疫疾患の治療に用いられる生物学的薬剤も、実験的治療として選択肢とされます。リツキシマブ(抗CD20抗体)は、皮膚筋炎、多発性筋炎、壊死性自己免疫性筋炎の患者さんでは有効とされています。特に、抗Jo-1、抗Mi-2、または抗SRP抗体を有する筋炎の患者さんでは、より高い反応性が期待されます。その他に、実験的治療と見なされる他の生物製剤には、多発性筋炎で効果的であるとされるアレムツズマブがあります。抗補体C3(エクリズマブ)は、補体介在性疾患に有効であり、皮膚筋炎および壊死性自己免疫性筋炎の治療への応用が期待されています。抗インターロイキン6(トシリズマブ)70および抗インターロイキン1レセプター(アナキンラ)が有効な症例も存在するとされています。抗インターロイキン-17および抗インターロイキン-1β(ジボキズマブ)は、海外では臨床試験が行われています(EudraCT、2012-005772-34)。

封入体筋炎の治療

封入体筋炎の病気がおこる過程では、T細胞媒介性細胞傷害作用、および前炎症性サイトカインによるアミロイド関連タンパク質凝集の増強がみられることから、免疫抑制剤が治療に用いられることがあります。
ステロイドホルモン、メトトレキセート、シクロスポリン、アザチオプリン、ミコフェノール酸が検討されています。これらのうち一部の治療では、短期的な改善がみられることがあります。

免疫グロブリン静注療法は、プラセボ対照試験※では有効性はなかったことが示されていますが、一部の患者さんでは、特に嚥下障害などには、一過性に効果がある場合があります。
(※新しい薬の効果を検証する際に、試験する薬とそっくりの偽薬(プラセボ)を用いて効果の比較を行うことをプラセボ対照試験(たいしょうしけん)といいます。)
アレムツズマブは、短期的には病状の安定化をもたらす可能性がありますが、今後有効性が示される必要があります。筋肉抑制性TGF-β分子や、筋肉成長因子を標的とした治験が海外では進行中です。TGF-βスーパーファミリーレセプターのシグナル伝達を阻害する抗体であるビマグルマブは、8週間後の筋肉量を増加させることが、小規模な研究で示されており、対照研究が進行中です(ClinicalTrials.gov、NCT01925209)。熱ショックタンパク質の応答を促進し、細胞ストレスをおさえる薬剤であるアリモクロモルの小規模な比較試験(ClinicalTrials.gov、NCT00769860)が完了しましたが、臨床的に有益かどうかは、まだ不明であるといわれています。

薬物療法以外の治療

疲労を生じさせない程度のリハビリテーション(理学療法や作業療法)は、歩行を改善し、転倒を予防し、廃用性筋萎縮を回避し、関節拘縮を予防するために有用です。
高度の嚥下障害の場合には、輪状咽頭筋切開術などの手術療法も検討されます。

*コラム1*
筋生検で得られる所見
皮膚筋炎

炎症は血管周囲にみられ、筋束間の隔壁に最も強くみられます。循環不全や筋束辺縁の筋線維の変性、小径化を引き起こす微小梗塞の結果、筋線維の壊死と貪食が筋束の一部や筋束外周にしばしばみられます。筋束外周の萎縮線維層によって特徴づけられる筋束辺縁の筋線維の小径化は、しばしば血管周囲および筋束間の浸潤を伴い、皮膚筋炎と診断されます。

多発筋炎、封入体筋炎

炎症は血管周囲にあり、筋内膜に多巣性に集中します。一見正常にみえる壊死していない、MHCクラスI抗原を発現する筋線維に、CD8陽性T細胞が攻撃する像が確認されます。(正常筋線維はこの抗原を発現しません。)
MHCの発現およびCD8陽性T細胞(MHC-CD8複合体と呼ばれる)浸潤の所見は、いくつかの筋ジストロフィーにみられるような非免疫性炎症を伴う障害の除外診断に有用です。
封入体筋炎では、CD8-MHC複合体を含む、多発筋炎の炎症性の特徴をすべて有していますが、さらに、結合組織の増生および筋線維の大小不同を伴う、慢性的な筋障害変化がみられます。また、ヘマトキシリン-エオシン(HE)染色、またはゴモリトリクローム変法で、「青みがかった赤色」の構造物がオートファジーの空胞の壁を裏打ちする像がみられるのが特徴的です。また、赤色ぼろ線維(ragged-red fiber)や、異常なミトコンドリアの存在を示すシトクロムオキシダーゼ陰性線維がみられる。空胞の隣には、蛍光染色やクリスタルバイオレット染色で可視化されやすい、コンゴーレッド陽性アミロイド沈着物がみられます。
電子顕微鏡では、空胞の隣に直径12〜16 nmの管状フィラメントが現れます。
典型的な封入体筋炎の臨床型を示す患者の30%以上で、空胞またはアミロイド沈着物は検出されず、炎症のみが見られます。そのため、多発性筋炎の誤診断につながりやすいとされます。
指屈筋(指を曲げる筋肉)、または大腿四頭筋(太ももの前面の筋肉)の筋力低下、MHCクラスI発現を伴う壊死を伴わない筋線維周囲の炎症、およびシトクロムオキシダーゼ陰性線維が存在すれば、空胞はなくとも、臨床的に封入体筋炎と診断できると考えられます。

壊死性自己免疫性筋炎

マクロファージに囲まれた壊死筋線維が豊富にみられます。リンパ球浸潤はまばらであり、壊死線維よりMHCクラスIのup-regulationが目立ちます。
壊死性自己免疫性筋炎は、SRP (signal recognition particle) またはHMGCR (3-hydroxy-3-methylglutaryl–coenzyme A reductase) に対する特異的抗体によって媒介されることが多く、しばしば毛管血管への補体沈着を伴います。
筋周囲の結合織に強い病理変化が起こることが特徴的です。その他に、間質性肺炎、関節炎、レイノー現象、発熱、機械工の手などを伴います。

*コラム2*
炎症性筋疾患の病理学的メカニズム
皮膚筋炎の免疫病理

炎症性ミオパチーの原因は不明ですが、自己免疫の病因が強く関与しています。
皮膚筋炎では、補体C5b-9の膜傷害性複合体が早期から(筋線維の破壊が明らかになる前に)活性化され、内皮細胞に沈着し、壊死、筋内膜毛細血管密度の減少、虚血、微小梗塞に似た筋線維の破壊を引き起こします。その他の残りの毛細血管は、虚血を補うために内腔が拡張します。灌流障害の結果、残存した筋束周辺の筋線維が萎縮します。 抗体による膜傷害性複合体の活性化は、炎症性サイトカインの放出を引き起こし、 血管内皮細胞の接着分子の発現を増やし、B細胞、CD4陽性T細胞、および形質細胞様樹状細胞を含む活性化リンパ球の、筋束周縁および筋内膜への移動を促進すると考えられます。

多発筋炎および封入体筋炎

CD8陽性細胞傷害性T細胞が、一見健康にみえる非壊死性筋線維を取り囲み、侵入します。しかし、その筋線維は、MHCクラスIの異常発現がみられます。MHCクラスIの発現は、正常の筋線維の筋鞘に存在しませんが、活性化されたT細胞によって分泌されるサイトカインにより誘導されると考えられます。
CD8-MHCクラスI複合体は、多発性筋炎および封入体筋炎の組織学的所見において特徴的であり、診断の確認に有用です。CD8陽性T細胞は、その細胞内に含有するパーフォリンを筋線維表面に向けて放出し、壊死を引き起こします。

*コラム3*
封入体筋炎の原因について

現在のところ、未解明の状態ですが、ある環境物質に対する免疫反応の制御に関する遺伝的リスク因子が疑われています。その他に、いくつかの遺伝的相互作用が示唆されています。それらには、HLA-DRB1 * 03と抗Jo-1抗体との関連、またHLA-DRB1 * 11:01と抗HMGCR陽性壊死性自己免疫性筋炎との関連、HLA-DRB1 * 03:01とHLA-DRB1 * 01:01と封入体筋炎との間連があります。
一方、ウイルスが免疫寛容を崩壊させる原因となるという可能性も考えられています。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、またはヒトTリンパ好性ウイルス(HTLV-1)に感染したヒトで、多発筋炎または封入体筋炎が発症することから、レトロウイルスを含むウイルス説が支持されていますが、その詳細は不明です。

封入体筋炎の変性の要素

封入体筋炎は複雑な障害であり、自己免疫性の要素に加えて、いくつかの線維内にコンゴーレッド好染性アミロイド沈着物がみられるため、変性の要素が存在すると考えられています。
アミロイド沈着物は、アルツハイマー病と同様に、アミロイド前駆体タンパク質、アミロイドβ-42、アポリポタンパク質E、α-シヌクレイン、プレセニリン、ユビキチン、リン酸化タウなどと免疫反応して、凝集すると考えられます。

アミロイド-β42と、そのオリゴマー(重合体)が細胞内毒性の経路に関与していることが示唆されていますが、これらのタンパク質性凝集体は他の空胞性のミオパチーでも見られるため、どのようにして炎症性疾患や変性疾患などを引き起こすのかについては、まだ明らかにはなっていません。

<参考文献>

Marinos C. Dalakas, M.D., Inflammatory Muscle Diseases, N Engl J Med 2015;372:1734-47.