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パーキンソン病に伴う症状(運動症状について)

パーキンソン病に伴う症状は大きく、以下の2種類に分けられます。

★体の動きに関する症状(運動症状)

振戦、動作緩慢、筋強剛、姿勢の不安定性
表情が乏しくなる、しゃべりにくさ(構音障害)、飲み込みにくさ(嚥下障害)、よだれが出やすい(流涎)
歩行時の腕振りの低下、歩行時の足の引きずり、加速歩行、椅子から立ち上がりにくい、寝返りがしにくい
字が小さくなる(小字症)、料理・食事・入浴などの動作に時間がかかる、眼瞼けいれん(まぶたがあけにくい)、手や足の指の変形、姿勢異常(側彎症、前屈み姿勢)

★体の動き以外の症状(非運動症状)

自律神経障害(便秘、尿回数の増加、尿失禁、起立時の急激な血圧低下、汗が多い、脂ろう症)
感覚に関する症状(においや味がわかりにくい、肩や背中の痛み、異常感覚(しびれや痛みなど))
睡眠の問題(レム睡眠行動異常、鮮明な夢を見る、日中の眠気、夜中に何度も目が覚める、入眠時に脚がむずむずする)
不安症、抑うつ、関心の低下、喜びの喪失、疲れやすくなる
思考が緩慢になる、言葉が出にくくなる、認知機能障害
体重減少

1817年に初めて、ジェームズ・パーキンソンが「振戦麻痺に関するエッセイ」で、後に彼の名を冠することになる病気について初めて述べました。19世紀後半、フランスの神経内科医シャルコーは、以前は「振戦麻痺」と呼ばれていたこの病気を「パーキンソン病」と呼ぶことにより、ジェームズ・パーキンソンを賞賛しました。シャルコーはまた、振戦を伴わないタイプのパーキンソン病についても記載し、パーキンソン病にみられる動作の鈍さは、もともとジェームズ・パーキンソンが考えた「筋力の低下」とは異なった病態であることを指摘しました。
1919年に、パーキンソン病では中脳の黒質の神経細胞が脱落することが発見されました。
1957年に、スウェーデンのルンド大学のカールソンらにより、神経伝達物質としてのドーパミンが発見されました。
1960年には、EhringerとHornykiewiczによって、パーキンソン病患者の線条体でドーパミン濃度が著しく減少していることが発見され、その翌年にはパーキンソン病患者対するレボドパ治療の有効性が初めて証明され、レボドパ治療の道が開けました。カールソンは、2000年にノーベル医学賞を授与されました。

4つの代表的な臨床症状

  • 安静時の振戦(ふるえ)
  • 筋強剛
  • 動作の緩慢さ
  • 姿勢の不安定性
安静時の振戦(ふるえ)

パーキンソン病の振戦は、主として安静静止時に手足や顔面、頚部に、自分の意志とは関係なく生じる、振るえの症状です。意識的に手足を動かしている最中には、振戦が抑えられるという特徴があります。一般的に、振戦(ふるえ)が主症状である患者さんの場合には、パーキンソン病の進行が比較的緩やかであることがわかっています。

安静時の振戦は、最も多くの患者さんにみられる症状です。片側の手足の遠位部に、4〜6Hzの周波数で起こります。口唇(くちびる)、顎(あご)、および脚(あし)に起こることもありますが、本態性振戦という別の病気とは異なり、首や頭にはあまりみられません。動作を行っている最中や、睡眠中には消えてしまいます。一部の患者さんでは、眼に見える振戦ではなく、体の「内部」でのふるえを訴えることがあります。

他方では、パーキンソン病が発病する数年〜数十年前から、本態性振戦と同じような姿勢時振戦を持っていたという患者さんもいます。このことから、本態性振戦はパーキンソン病発症の危険因子であるとされています。パーキンソン病の患者さんの多くでは、安静時の振戦に加えて、姿勢時振戦があります。

安静時振戦の病状は、経過中に変化します。ある研究では、約7割の患者さんで病気の初めにあったふるえ症状が続きますが、その約1割の患者さんで進行期には無くなってしまうと報告しています。その他にも、約1割の患者さんではずっと振戦がみられないとする報告もあります。病理学的研究では、 中脳のドパミンニューロンのA8サブグループの変性の有無により、振戦の程度が決まっていることが分かっています。

筋強剛

全身の筋肉がこわばって硬くなり、体を動かそうとする際もスムーズさが無くなります。他動的に手足の関節を曲げ延ばししたときに、「歯車現象」というカクカクした抵抗がみられます。筋強剛は痛みを引き起こすことがあります。最も多くみられるパーキンソン病の諸初症状の一つである肩の痛みは、しばしば関節炎や滑液包炎、回旋腱板の損傷と間違われることがあります。後述しますが、腹筋や背筋など、体幹の筋肉に起こることで、姿勢異常の原因となることがあります。

動作の緩慢さ

動きが遅くなったり、動きが少なくなったりする症状です。歩くスピードは遅くなり、姿勢は前屈になって、足を引きずって歩くようになります。また、寝返りがうまく打てなくなります。顔の筋肉の動きも少なくなり、瞬きが少なくなり、表情が乏しくなります。その他の症状としては、ものの飲み込みの障害(嚥下障害)、話し声が小さく単調になる、歩行中の腕振りが無くなります。動作が遅くなるという症状は、うつ病などのその他の病気でもみられますが、パーキンソン病では、脳深部にある大脳基底核の障害により、動作の計画、開始、実行が困難となった結果と考えられます。また、動作の緩慢さは、その時の精神状態により変化します。例えば、気持ちが興奮している時には、おもわず素早い動きをすることができたりして、周囲を驚かせることがあります。

動作緩慢は、脳内ドーパミン欠乏の程度とよく相関しており、これは、病理学的に中脳黒質のドパミン細胞の脱落を調べた研究や、PETによって黒質および側坐核-線条体複合体の18F-fluorodopa取り込み低下と動作緩慢の相関を調べた研究で確かめられています。動作緩慢は、ドーパミン神経機能の障害により、通常の大脳皮質活動が低下した結果と考えられています。特に、運動の開始時、特に大きく素早い動作の開始、維持に必要な筋力が出にくくなると言われています。

姿勢の不安定性

病初期にはあまり見られませんが、病気が進行すると、体が傾いた時に姿勢を立て直すことができなくなり、転びやすくなります。これを姿勢反射障害と呼びます。座っている時にも、姿勢をまっすぐ保つことができず、斜めに傾いたり、前や後ろに倒れてしまいます。これが重度になると、立っている銅像が倒れるように受け身の姿勢を取ることなく倒れてしまい、しばしば大きな外傷や骨折につながります。
医師は、Pullテスト(患者さんの両肩を素早く後ろから引っ張り、倒れないかどうかを診る)という方法で、この「姿勢の不安定性」を調べます。体勢を崩さないようにしようとする反応が起こらない場合には、異常と判定します。姿勢の不安定性は、転倒の原因としては最も多く、骨盤骨折や大腿骨骨折の重大な要因です。
初めての転倒が起こる時期は、パーキンソン病関連疾患のそれぞれの病気によって異なることが分かっています。(パーキンソン病では発病から平均9年目、進行性核上性麻痺では約1年半、多系統萎縮症では約3年半) パーキンソン病では、起立性低血圧や視力障害などの症状からも姿勢の不安定性が起こることがあります。転倒に対する恐怖心が、さらにバランス感覚を悪くさせます。ある研究では、38%の患者さんに転倒の経験があり、13%では週に1回以上の転倒がありました。おそらく、転倒の多さと病気の重症度は関連していると考えられます。
治療(ドパミン補充療法、脳深部刺激療法)により、姿勢の不安定性は改善しますが、多くは完全には無くなりません。さまざまな脳部位(視床下核、淡蒼球、視床、脚橋核)への手術治療も検討されています。

姿勢異常

頚部や体幹(体軸)の筋強剛が起こってくると、異常な姿勢(首下がり、体幹の前屈や側彎)を伴うことがあります。高度の頚部屈曲(いわゆり「首下がり」)や、体幹の前方屈曲(カンプトコルミア)、側彎症などは、一般に進行期に起こりやすいとされます。体幹の前方屈曲(カンプトコルミア)は、胸腰椎の異常な屈曲が特徴で、歩行時に悪化し、座ったり寝た姿勢で軽減したり、壁やテーブルに寄りかかって体幹を意図的に伸ばしたときにも軽減します。その他には、Pisa症候群と呼ばれる、座ったり立ったりしているときに、体幹が傾いてしまう姿勢異常もあります。
また、若年発症の患者さんに多い異常として、パーキンソン病に特徴的な手や足の変形(striatal handやstriatal toeと呼ばれる)があります。

すくみ現象

すくみ現象は、動作を開始する際にその動作が止まってしまうことで、もっとも厄介な症状の一つです。すくみ現象は、パーキンソン病の特徴的な症状の一つですが、全ての患者さんに起こるわけではありません。ドイツからの報告によると、47%の患者さんにすくみ現象があるといわれています。女性より男性に多くみられます。手足のふるえ症状が主症状である患者さんは、すくみ現象を起こす頻度は少ないとされます。
すくみ現象が最も起こりやすいのは歩く時です。手やまぶたにも同様の現象が起こり、手が使いにくくなったり、眼を開けにくくなったりします。典型的には、すくみ現象は突然起こり、長続きはしません(通常10秒以内)。歩き始めや特定の動作時(歩いて行く方向を変えるとき、狭い通路を歩くとき、混雑している通りを横切るとき、目的地に近づくとき)に起こり、足が動かず前に進めなくなったり、転びやすくなったりします。そのため、日常生活に大きな影響が出ます。すくみ足には5つのタイプがあるといわれています:歩き初めのすくみ足、方向転換時のすくみ足、狭い場所でのすくみ足、目的に接近する時のすくみ足、広い場所でのすくみ足。オフ時に強くなり、レボドパの内服により軽減されます。加えて、しばしば患者さんはすくみ現象を解決する「裏技」や「コツ」をすでに知っていて、歩き初めの号令を声に出す、物をまたぐ(歩行用の杖、地面の模様)、音楽に合わせて歩く、体重を前方にかける、などがあります。

すくみ現象に関係する危険因子には、筋強剛、動作緩慢、姿勢の不安定性、長い罹病期間が挙げられます。それに対して、発症時に振戦が強い病型の患者さんの場合には、すくみ現象を起こすリスクは減少します。すくみ現象は、典型的には病後期に起こり、主要な症状ではないので、早期に起こった場合にはパーキンソン病以外の診断を考慮します。特にオン時に起こるすくみ現象は、通常レボドパ治療に反応しませんが、セレギリンによりやや軽減するという報告もあります。

その他の運動症状

構音障害、小声、嚥下障害、流涎(よだれが出る)の症状のことを「球症状」といいますが、この球症状はパーキンソン病の主症状と同等、あるいはそれより高度の障害を引き起こします。これらの症状は、口、顔面、喉頭などの動作緩慢と筋強剛に関連して起こります。話し言葉の抑揚がなくなり、弱くかすれたような声になり、話す速さはまちまちですが、言葉がなかなか出てこないことがあります。パーキンソン病の言語障害を改善する目的で開発されたリーシルバーマン音声療法(LSVT-LOUD)という言語治療がありますが、これは声量と発話の質を向上させるような努力に重点をおくことで構音障害を軽減するものです。当院でも積極的に取り入れています。嚥下障害は、嚥下反射の惹起不全や、咽喉頭の動きの遅延によりおこる事が多く、しばしば無症候性に、病初期から起こります。流涎(よだれが出る)も、嚥下運動の減少により起こると考えられます。

その他に、神経眼科的な異常もみられます。瞬目(まばたき)の減少、眼球表面の炎症、涙液層の変化、幻視、眼瞼けいれん、輻輳の障害などが挙げられます。眼球の動き(追従性運動、衝動性運動)は、病気の進行とともに障害が進みます。一般的には、レボドパ治療により改善します。

また、(拘束性あるいは閉塞性)呼吸障害が起こることがあります。呼吸障害は生命予後に関連する重大な合併症であり、施設入所中のパーキンソン病患者さんにとって、特に肺炎は独立した死亡予測因子と言われています。閉塞性パターンは、筋強剛や、頸椎関節症、頚部の可動域制限に関連して起こります。拘束性パターンは、胸郭運動の筋強剛に関連しています。

<参考文献>

J Jankovic, J Neurol Neurosurg Psychiatry 2008;79:368–376., Parkinson’s disease: clinical features and diagnosis