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関節リウマチの治療―薬を減量・中止することができるか―

みなさん、こんにちは。今回は、平成30年11月4日の市民公開講座の内容をご紹介したいと思います。
当科の市民公開講座は基本的に1年に1回行っているのですが、今回の講演にあたっては、何を話すかについて、かなり迷いました。結局、聞いていただく人に相談するのがベストだろうと、生物学的製剤を点滴しているときや、外来で時間のゆとりのあるときなどに、患者さんにお尋ねしてみました。
そうしますと、「今後のことを考えると、薬を減らしたり、中止してもよいのかを聞きたいです。それから、日々の生活でどのようなことに注意したらよいのかを聞きたいです」というご意見を多くいただきました。
そこで、今回は前者の「薬を減量・中止することができるか」ということをお話しし、後者のトータルケア(感染症、動脈硬化、骨粗しょう症、悪性腫瘍、消化性潰瘍、抑うつなどの管理)については、次回以降とさせていただくこととしました。

本日の話の構成

今回の話も、二部構成になっています。
第一部は、関節リウマチの治療の基礎です。これまでの講演とも重なる部分が多いので、第二部の内容を理解するために必要な知識の復習をするくらいの最小限にとどめておこうと思います。
そして、第二部が、本命の「薬を減量・中止することができるか」という話です。現在、実際に治療を受けているかたであれば、第二部のところからみていただいてもよいのでは、と思われます。あるいは、現在使っていらっしゃる薬剤についてのところからみていただくというのもあるでしょう。
いつものように、話し言葉で記載していきます。前回もそうでしたが、著作権の関係のためにスライドそのものを掲載できないことをお許しください。もちろん、内容はスライドなしでも理解可能なものになっています。

はじめに

宇多野病院リウマチ膠原病内科、統括診療部長の柳田です。本日は、当院の市民公開講座にご出席いただき、誠にありがとうございます。
当科では、私を含め、4名の医師で関節リウマチなどの膠原病に対する診療を行っています。本日は当科を代表して私がお話をさせていただきます。
今回も、関節リウマチの治療についての話です。いつもながら、盛り沢山な内容になってしまいました。理解しにくい点については、質問の時間も用意しています。ご遠慮なく、ご質問ください。時間のある限り、お答えします。
本日の講演が、ここにいらっしゃる全ての皆様にとってお役にたつことを、心から願っています。

第1部
関節リウマチの治療に関する基礎知識

関節リウマチ治療の基本原則

関節リウマチの治療は4階建てになっています。火事にたとえれば、できるだけ下の階で延焼を抑えて、2階、3階、4階に火がまわっていかないようにすることを目指しています。
1階は関節の炎症で、これを抑えていかないと、2階の関節破壊をひき起こしてしまいます。2階の関節破壊を抑えていかないと、3階の関節機能の低下を招いてしまいます。
3階の関節機能の低下を起こしてしまいますと、4階の現在の生活の継続、労働能力の確保、生命予後の改善ということは望めなくなっていまいます。
結局のところ、1階の火事、炎症をどれだけ抑え込めるかということが、治療の鍵となってくるわけです。

2階、3階へと火を燃え広がせていかないために、1階の炎症をどこまで抑えこむか、という治療目標が、2011年に発表されました。
それによると、「寛解」を目指すことになります。
よりわかりやすい数値目標でいきますと

①圧痛関節数は1以下
②腫脹関節数は1以下
③CRP値は正常
④患者さん自身の評価で、最悪を10とした場合の現状が1以下

の全てを充たすことになります。

「寛解」は、すべての患者さんを対象とした治療目標ですが、中にはこの目標を達成するのは難しいかたもいらっしゃいます。発症してから時間の経過している長期罹患の患者さんや、合併症などの問題で十分な治療がやりにくい患者さんなど、様々な事情をかかえたかたがいらっしゃいます。
その場合は「寛解」のかわりに、「低活動性」が治療目標になります。
「低活動性」を治療目標とする場合は、これらの数値は3程度まで容認されます。3くらいまでは、関節機能の悪化がそれほど進まないということがわかっているからです。

これらの治療目標を達成するための中心となるのが、薬物治療です。

関節リウマチの治療薬の種類

現在、保険承認されている抗リウマチ薬は、合成抗リウマチ薬と生物学的製剤に2分されます。

①合成抗リウマチ薬は、基本的に内服薬、飲み薬です。
②生物学的製剤は注射の薬(点滴・皮下注射)です。

合成抗リウマチ薬は、さらに二つに分かれます

①従来型抗リウマチ薬(リウマトレックス:MTX:メトトレキサート、アザルフィジンEN、リマチル、プログラフ、ケアラム、アラバ、シオゾールなど)
②標的型抗リウマチ薬(標的を限定して、効果を高めたもの:現状ではゼルヤンツ、オルミエント)

生物学的製剤も、さらに二つに分かれます。

①先発品(レミケード、エンブレル、ヒュミラ、シンポニー、シムジア、アクテムラ、ケブザラ、オレンシア)
②後続品(バイオシミラー:BSといいます。現状では、インフリキシマブBSとエタネルセプトBS)

生物学的製剤(先発品)の種類

生物学的製剤(先発品)には現在8種類があります。
これらは、作用する標的物質の違いによって、3種類に分けられます。

①TNF阻害薬:レミケード、エンブレル、ヒュミラ、シンポニー、シムジア
②IL-6阻害薬:アクテムラ、ケブザラ
③T細胞共刺激阻害薬:オレンシア

「関節リウマチの薬物治療のスタンダード」
これらの製剤を単独、もしくは組み合わせて、薬物治療を行っていきます。
治療の基本となるのは、従来型合成抗リウマチ薬のMTX(メトトレキサート)です。
これで効果不十分の場合に、生物学的製剤または標的型合成抗リウマチ薬を追加していくのがスタンダードな薬物治療のやり方です。

第2部
薬を減量できるか?中止できるか?

リウマチの治療がうまくいって、治療目標である、寛解・低活動性の状態が達成できたとします。そこから後のことを考えていきましょう。
この寛解・低活動性の状態を維持していく、つまり病状の悪化、再燃を防ぐためには、どのような注意が必要なのでしょうか。

従来型抗リウマチ薬のみで治療している場合は、薬を中止すべきではない

ここで、一つのケースを考えてみましょう。世界的に支持されているT2Tという関節リウマチの治療戦略の解説スライドキットの中のケースです。私の個人的な意見ではありません。
この患者さんは、アザルフィジンENを服用して2年間が経過しています。もう、1年以上、関節の痛みも腫れもありません。血沈・CRPも正常値で、定期の関節のレントゲンでも進行は認められていません。
「薬をのむのはわずらわしい」と、アザルフィジンENの服用を中止したいと希望されていらっしゃいます。中止してしまってよいでしょうか。
答えは、「中止しない。医師は患者さんを説得すべき」というものです。

アザルフィジンENのような従来型抗リウマチ薬でリウマチが安定している場合に、そのまま服用を続けたグループ、中止したグループの2つにわけて、その後の経過をみた報告があります(Lancet 1998;347:347)。
1年後の結果はどうだったでしょうか。服用を続けていても、リウマチが悪化する場合は、20%でありました。しかし、中止したグループでは、その倍の40%の人が悪化してしまいました。さらに時間が経過すれば、この差はもっと開いていくと考えられます。

同じような報告は、他にもたくさんあります。リウマチが落ち着いていても、従来型抗リウマチ薬は止めないほうがよさそうです。
ただし、生物学的製剤などと併用している場合は、ここでは考慮されていません。生物学的製剤と併用している場合に、従来型抗リウマチ薬を減量・中止してもよいかについては、後で述べようと思います。

生物学的製剤を減量・中止できるか

生物学的製剤は関節リウマチの治療に革命を起こした薬剤です。生物学的製剤のおかげで、仕事や自分のやりたいことを続けることができている患者さんは、おおぜいいらっしゃると思います。
しかし、生物学的製剤は高額な薬剤でもあります。通常量で使えば、どの製剤も月4万円近い自己負担が必要になります。医療費助成が適用されて負担が軽減される場合もありますが、その対象になるのは全員ではありません。
「減量・中止できないか?」と、患者さんが考えるのは、もっともなことだと思われます。

治療薬の減量・中止の優先順位

日本リウマチ学会の発表した「関節リウマチ治療ガイドライン2014」をみてみましょう。
ここで記された内容を噛み砕いて説明しますと、

①ステロイドをまず減量
それで安定していれば、
②従来型抗リウマチ薬を併用している場合に、生物学的製剤の減量を考慮できる
③寛解の状態が長期間続いていれば、従来型抗リウマチ薬の投与量を、慎重に減量することを考慮してよい

ということで、減量の優先度は、①ステロイド、②生物学的製剤、③従来型抗リウマチ薬、となっています。これがいちおうの基本となると考えられます。

生物学的製剤の減量・中止

生物学的製剤の減量・中止については、TNF阻害薬とそれ以外では事情が異なりそうです。
TNF阻害薬5種類の中でも、事情は異なります。

TNF阻害薬エンブレルを減量・中止できるか

TNF阻害薬の中では、エンブレルからお話を始めます。
なぜ、エンブレルから始めるかといいますと、同じTNF阻害薬の中でもエンブレルの作用機序は他の製剤と少し異なるからです。
詳細は省きますが、エンブレルは「受容体型製剤」で、他のTNF阻害薬レミケード、ヒュミラ、シンポニー、シムジアは「抗体型製剤」です。この両者は異なる特性をもっています。
初めに、エンブレルの減量・中止を試みた、PRESERVE試験の結果をご紹介します。
リウマチを発症してから平均13年、エンブレルの使用が平均3年間で、低活動性以下の状態で安定している人が対象です。3つのグループに分けて、2年間追跡していきます。

①そのまま週50㎎でエンブレルを継続
②週25㎎に減量してエンブレルを継続
③エンブレルを中止して、メトトレキサート(MTX)のみで治療を継続

それぞれのグループで、2年間悪化せずにすんだ人の割合は、以下のようでした。

①そのまま週50㎎でエンブレルを継続:52%
②週25㎎に減量してエンブレルを継続:44%
③エンブレルを中止して、メトトレキサート(MTX)のみで治療を継続:13%

これをみますと、エンブレルを中止するのは難しそうです。ただし、50㎎から25㎎に減量することは、それほどリスクはなさそうです。

それでは、エンブレルを減量、中止して、状態が悪化してしまった人に、ふたたびエンブレル50㎎を投与したらどうなるでしょうか。DOSERA試験の結果をご紹介します。
その結果は、エンブレル50㎎再開後20週(約5か月)までに、全員がもとの状態に戻ったというものでした。うまくリカバリーできたわけです。

エンブレルという薬剤は、中止してしまうことは難しそうです。
しかし、安定した状態であれば、週50㎎から25㎎に減量することは十分に可能な薬剤です。さらに、減量・中止した場合でも、週50㎎の量で再開すれば、もとの状態にもどることができそうです。
受容体型TNF阻害薬であるエンブレルという薬剤は、状況に応じて、使用量を柔軟に調整できるという特徴がありそうです。

抗体型TNF阻害薬レミケードを減量・中止できるか

今度は、抗体型TNF阻害薬レミケードの話です。
レミケードの投与量を25%ずつ減量していって、最大100%減量、つまり中止していくことができるかを、1年間追跡した報告をご紹介します(Ann Rheum Dis 2012;71:1849)。
リウマチを発症してから平均12年、レミケードの使用が平均5.6年間で、低活動性以下の状態で安定している人が対象です。
結果は、25%減量は約7割で達成可能、50%減量は約6割、75%減量になると5割弱、中止はほとんど無理というものでした。平均としては、1年後には減量を開始する前の60%くらいの量で投与されていました。

どのような人が、レミケードの減量に成功しやすかったでしょうか。活動性、自己抗体の有無、罹病期間などさまざまな指標を用いて解析がなされました。しかし、残念なことに、結論は「よくわからない、やってみないとわからない」というものでした。

次はレミケードを中止した試験、RRR試験という有名な報告を紹介します。
リウマチを発症してから平均6年、レミケードを使用して低活動性以下の状態で半年間以上安定している人が対象です。
中止して、1年後の状態はどうだったでしょうか。
55%の人が、中止後も悪化しませんでした。背景は異なりますが、さきほどのエンブレルより、数字的にはいい数字です。
悪化した人のうち、レミケードを再開した人では、7割の人がもとの状態にもどりました。

この報告で意義深いのは、どんな人がレミケードを中止しやすかったかが、明らかになったことです。中止しやすい人は、①罹病期間、つまりリウマチを発症してからの期間が短い、②関節が壊れていない、というものでした。③レミケードを中止するときのリウマチの活動性が低ければ低いほうがよさそうだ、ということもわかりました。

抗体型TNF阻害薬シムジアを減量・中止できるか

レミケードのRRR試験で判明した、「リウマチを発症してからの期間が短いと、中止しやすい」という解析結果が、他の抗体型TNF阻害薬、シムジアでも検証されています(Ann Rheum Dis 2015;74:35)。
ここでは、リウマチを発症してから平均4か月という超早期の人に、シムジアとMTXを1年間使った後に、シムジアを中止しています。
シムジアとMTXを1年間使って、6割の人が寛解の状態になりました。この寛解に到達した人でシムジアを中止したところ、さらに1年後の時点でも、8割の人が寛解の状態を維持できていました。
やはり、発症して間もない人では中止がしやすいといえるようです。

抗体型TNF阻害薬ヒュミラを減量・中止できるか

リウマチになって間もない人に使用して、中止することができるかというエビデンス(根拠)が多数あるのは、抗体型TNF阻害薬ヒュミラです。
まずは、HIT-HARD試験です。この試験では、リウマチになってからの期間が平均2か月の人に、ヒュミラとMTXを6か月間使用した後に、ヒュミラを中止してさらに6か月間追跡しています。
ヒュミラとMTXを6か月使用して、約半数の人が寛解の状態に入りました。この状態でヒュミラを中止したところ、さらに6か月の時点で、そのうちの約9割の人がそのまま寛解の状態を維持できていました。

さらに、わが国で行われたHOPEFUL試験の結果をご紹介します。
この試験では、リウマチになってからの期間が平均3か月の人に、ヒュミラとMTXを1年間使用した後に、低活動性以下の状態でヒュミラを中止しています。中止後に、さらに3年間という長期にわたる追跡を行っています。
その結果は、ヒュミラ中止後3年間経過しても、約8割の人が低活動性以下の状態を維持できていたというものでした。ちなみに、ヒュミラを中止せずに継続していた人では、約9割の人が低活動性以下の状態を維持できていました。

リウマチを発症して間もない人に、ヒュミラを6か月から1年くらい使用すれば、その後で中止しても良好な状態を維持できる可能性が十分にある、ということは、私自身も日常の診療で十分に経験しています。

TNF阻害薬使用の意義

超早期(リウマチを発症してから3、4か月以内)の導入であれば、抗体型TNF阻害薬(ヒュミラ、シムジア、レミケード)の中止も妥当性がありそうです(同じ抗体型のTNF阻害薬であるシンポニーも同様に中止は可能だと思われますが、ちゃんとした試験での証拠がありません)。
先ほど紹介したように、ヒュミラを6か月間投与したとしたら、自己負担は概ね22万円(社会の負担は52万円)です。海外旅行に行ったと思って初期に投資すれば、寛解に到達できる可能性も高まり、その後、従来型抗リウマチ薬だけで維持できる可能性も高まります。決して損な話ではないと思います。

2018年8月14日に、日本リウマチ学会の「関節リウマチに対するTNF阻害薬使用ガイドライン」の改訂版が発表されています。
内容は、以下のようなものです。

①既存の抗リウマチ薬の治療歴のない場合でも、
 (最初からTNF阻害薬を使ってよいということですが、保険承認との兼ね合いが微妙です。保険上は、ヒュミラとシムジアのみがこの条件に適合します)
②罹病期間が6か月未満の患者では、
③DAS28-ESRが5.1超で、さらに予後不良因子を有する場合、
 (腫れている関節と圧さえて痛い関節が概ね6か所以上の活動性の高い状態で、リウマトイド因子や抗CCP抗体が陽性、関節破壊をすでに認めるなどの状況)
④MTXとの併用によるTNF阻害薬の使用を考慮
超早期のTNF阻害薬使用の意義を確認した内容です。

ここでは受容体型、抗体型の区別は記載されていませんが、治療目標達成後の中止ということを視野に入れた場合には、抗体型TNF阻害薬が優先されるのではないでしょうか。
ただし、受容体型TNF阻害薬は、後で説明します「免疫原性」という点で抗体型製剤よりも有利であり、その結果として、効果の持続性という点で優れた特性を持っています。さきほど申し上げたように、投与量の調整がしやすいという特性もあります。
その人の状況によって使い分けていくことになるでしょう。

IL-6阻害薬アクテムラを減量・中止できるか

次は、IL-6阻害薬であるアクテムラについてのお話です。アクテムラは点滴の製剤と皮下注の製剤がありますが、ここでお話しするのは点滴の製剤の場合です。
アクテムラの中止を試みた報告をご紹介します(Ann Rheum Dis 2015;74:35)。
リウマチを発症してから平均3年、アクテムラの使用が平均5年間の人が対象です。アクテムラのみの治療で、それ以外の抗リウマチ薬は併用していません。
中止後半年たった時点で、低活動性以下の状態にとどまっていた人の割合は35.1%でした。1年たった時点では13.4%でした。
アクテムラは良い薬剤ですが、さすがに、中止してまったく治療薬の無い状態で1年間持ちこたえるのは無理であったようです。

それでは、再燃した場合に、アクテムラを再開したら、もとの状態にもどれるでしょうか。リウマチを発症してから平均8年の人で、アクテムラを中止したあと、アクテムラを再開した報告があります(Mod Rheumatol 2014;24:26)。
アクテムラを中止していた期間は平均5か月です。アクテムラの再開によって、95.5%の人が再び低活動性以下の状態にもどりました。エンブレルの再開の成績を思い出させるような結果です。

さきほどは、アクテムラだけの治療でアクテムラを中止した場合の成績でしたが、アクテムラ以外の薬も併用している場合で、アクテムラを中止したらどうでしょうか。
これについては、これまでの報告ではあまり良くない結果でした。ある報告では、併用薬を残していても1年のうちに8割程度の人が再燃したとなっています(Ann Rheum Dis 2015;74:35)。
最近の日本からの報告では、もう少しよい成績が示されています(Ann Rheum Dis 2018-213416)。この報告では、リウマチを発症してから平均3.5年の人にアクテムラとMTXで治療して、寛解の状態になった後で、アクテムラを中止し、MTXだけの治療で1年間追跡しています。
1年後も寛解の状態を維持できた人の割合は24.4%でした。もう少しゆるい基準でみて、低活動性以下の状態でとどまっていた人の割合になりますと、55.1%でした。
TNF阻害薬の場合と比べてどうか、というのは、患者さんの条件が違うので何ともいえませんが、MTXなどの従来型抗リウマチ薬を残しておけば、それなりの中止成功率はありそうです。

さて、TNF阻害薬では、リウマチを発症して間もない、超早期の患者さんでは、中止の成功率が高いという傾向がありました。アクテムラではどうでしょうか。
リウマチを発症してから平均1か月の人でアクテムラを使用し、寛解の状態を達成した後にアクテムラを中止するという、U-Act-Early試験があります(Lancet 2016;388:344)。
この報告では、8割以上の人が寛解の状態を達成し、1年間で約3割の人がアクテムラを中止できたと記載されていますが、これまでの中止の試験とは試験デザインが全く異なりますので、この成績がどうなのかを評価することは困難です。

現状では、アクテムラで治療して治療目標を達成した後にアクテムラを中止することは、それなりに可能ではありますが、TNF阻害薬ほどの根拠はないというのが平均的なところではないでしょうか。
アクテムラの皮下注製剤でどのくらい中止が可能かについては、まだ十分な報告がありません。

また、アクテムラと同じくIL-6を阻害する製剤であるケブザラについては、中止した場合の成績を示す報告はまだありません。

T細胞阻害薬オレンシアを減量・中止できるか

生物学的製剤の最後としては、T細胞阻害薬のオレンシアです。
やはり、発症して間もない患者さんに使って、中止が可能であるかが、興味の持たれるところです。
AVERT試験は、リウマチを発症してから平均7か月の人で、オレンシアを1年間使った後で、オレンシアを中止したらどうなるかをみた試験です。
オレンシアとMTXを併用して1年間治療して寛解の状態に到達した後、オレンシアを中止してMTX単独で治療した場合、さらに半年後に寛解の状態を維持できていた人は、そのうちの3割くらいにとどまりました。
オレンシアのみで1年間治療して寛解の状態に到達した後、オレンシアを中止した場合も、さらに半年後に寛解の状態を維持できていた人は、そのうちの3割弱にとどまりました。

患者さんの条件が違いますので比較はできませんが、なんとなく、アクテムラの結果を連想させるものがあります。

ただし、オレンシアの中止については、他の生物学的製剤とは異なる傾向があります。
リウマチになってから、それなりの期間が経過している患者さんでの、中止の成績です(Ann Rheum Dis 2015;74:19)。
この報告では、リウマチを発症してから9~15年経過したベテランの人を対象にしています。従来型抗リウマチ薬を併用する状況で、オレンシアを平均3年6か月間(さきほどのAVERT試験では1年間の使用でした)使用し、寛解の状態に到達した後で、オレンシアを中止して1年間追跡しています。
1年の間で寛解の状態から再燃しなかった人の割合は4割程度と、良好な成績が示されました。さきほどの早期の患者さんの場合(3割)よりも良い成績のように見えます。

TNF阻害薬では、発症して間もない患者さんのほうが中止の成功率が高かったのに、オレンシアでは長期間経過した患者さんのほうが成功率が高いようにみえるのはなぜでしょうか。
この理由については検証されていませんが、私の個人的な意見としては、オレンシアの使用期間の問題だと考えています。ベテランの人を対象とした試験では、オレンシアの平均使用期間が長かったことが好結果につながったのではないかということです。
オレンシアは、関節リウマチの発症・維持に関わる、抗CCP抗体やリウマトイド因子といった自己抗体が作られるのを抑えていく働きがあります。TNF阻害薬やIL-6阻害薬の治療でも自己抗体は減ってはいきますが、オレンシアのほうが減少させる効果は高いことが知られています(Semin Arthritis Rheum Dis 2016.09011)。その報告をみると使用開始後2年くらいまで、自己抗体は減っていくようです。
もしもこの考え方が正しいとしたら、オレンシアを中止するのは、オレンシアを長期間(少なくとも2年間以上)使用してからとするのが良いのかもしれません。さらに、この考え方が正しいとしたら、ベテランの患者さんに使用した場合でも生物学的製剤を中止できる可能性があります。ただし、これはあくまでも私個人の考えで検証もされていません。

オレンシアの減量の報告も紹介しておきましょう(Ann Rheum Dis 2015;74:19)。
リウマチを発症してから平均2年の人が、オレンシア(点滴製剤)を平均2年間使用して、寛解の状態に到達した後で、オレンシアの投与量を半分に減量して、1年間追跡しています。
再燃した人の割合を追っていきますと、もとの量のままで治療を続けた人に比べて、減量後4か月くらいのところから、少し再燃率が高いようにみえます。しかし、減量後1年の時点での再燃率はもとの量のままの治療と同様でした。
寛解達成後のオレンシアの減量はそれなりに可能だと思われます。しかし、どのような人が減量の成功率が高いかなどについては、まだわかっていません。

リウマチの活動性が落ち着いていれば、生物学的製剤の注射の間隔を延ばしていけるか?

ヒュミラとエンブレルで、注射の間隔を延ばしていった報告を紹介しましょう(Ann Rheum Dis 2016;75:59)。
それぞれの製剤で治療している人が、寛解の状態に到達したら、注射の間隔を50%ずつ延ばしていきます。エンブレルだったら、1週間から10日、10日から2週間、といった感じですし、ヒュミラだったら、2週間から3週間、3週間から4週間といった感じです。リウマチの勢いが再燃したら、その前の投与間隔にもどります。1年半の間の追跡です。
寛解を維持できた人の割合はどうだったでしょうか。本来の間隔で治療していたグループでは6割の人で寛解を維持できました。しかし、間隔を延ばしていったグループでは、寛解を維持できた人は3割弱の人にとどまりました。
この試験では、再燃した人が本来の間隔での投与にもどったら、どのくらいの割合でもとの状態にもどることができるかは調べられていません。エンブレルのところでお話ししたように、エンブレルなら本来の投与間隔にもどした場合には、もとの状態にもどれるのではないかと思われます。ヒュミラの場合では、推測の手掛かりとなるデータが十分にはありません。
注射の間隔を延ばしていくことは不可能ではありませんが、個々のケースで慎重に考える必要がありそうです。

注射の間隔を延長していくことの問題点

投与の間隔を延ばすと、なぜ治療効果が弱くなってしまうのでしょうか。「量が減るのだから、治療効果が弱くなるのは当たり前だ」とお考えになると思われますが、実際の事情はもう少し複雑です。

我々の免疫のシステムは、自分の体の成分と異なるものが侵入してくると、それと結合し、無力化する、「抗体」というものを作ります。そして、その物質が無力化されたら、もう「抗体」は作られなくなって、消失していきます。
生物学的製剤も、自分の体の成分とは異なるものなので、それに対する「抗体」が作られる可能性があります。
3つのパターンがあります。

①たとえば、1回だけ生物学的製剤が投与されたら、生物学的製剤に対する抗体「抗製剤抗体」を作りますが、しばらく時日が経過すると、「抗製剤抗体」は消えていきます。
インフルエンザワクチンを接種するのと、同じ理屈です。
②継続して生物学的製剤が投与され、常に体内に生物学的製剤がある状態になったら、「抗体」はどうなるでしょうか。
我々の免疫のシステムは、体内に常にある物質に対しては「抗体」を作らないようにするように調整されていきます。その結果、「抗製剤抗体」は、いったんは作られたとしても、消えていくように誘導されます(もちろん、全例で消えていくわけではありませんが)。
③生物学的製剤の注射の間隔が本来より延ばされた状態を考えてみましょう。生物学的製剤は、あるときは体内に存在し、あるときは体内に存在しない、という状況を繰り返すことになります。

これは、「抗体」が作られにくい小児で、インフルエンザワクチンを2回反復して接種するのと、同様の状況になります。
このような状況では、生物学的製剤に対する抗体「抗製剤抗体」が作られやすくなってしまいます。

「抗製剤抗体」は生物学的製剤と結合して、その効果を悪化させてしまいます。
注射の間隔を延ばしていくことの問題点は、この「抗製剤抗体が作られやすくなってしまう」ということにあります。
ただし、生物学的製剤の中でも、抗製剤抗体の作られやすさには差があります。
詳細は述べませんが、我々の体内にある物質との同一性から、エンブレル、オレンシアは、比較的に抗製剤抗体が作られにくい製剤です。もしも注射の間隔を延長する場合には、考慮にいれておいてもよいかもしれません。

生物学的製剤を減量・中止するか?従来型抗リウマチ薬を減量・中止するか?

これは、なかなか難しい問題です。
というのは、薬剤の薬理学的な特性の問題というよりも、①費用負担、②安全性、③治療効果、の3つのファクターが絡まりあった問題であるからです。
生物学的製剤を継続できる経済的な裏付けがあれば、従来型抗リウマチ薬の減量・中止のほうに向かうでしょうし、経済的に厳しければ、生物学的製剤の減量・中止のほうに向かうでしょう。
あるいは、腎臓の働きが悪化傾向であれば、腎臓から体の外へと排出される従来型抗リウマチ薬の副作用のリスクが高くなりますので、それを減量・中止していくことになるでしょう。
いちおう、この問題についての報告をひとつ紹介しておきます(Ann Rheum Dis 2016;75:2119)。リウマチを発症して平均6か月で、従来型抗リウマチ薬と生物学的製剤を1年間使って、寛解の状態に到達した人が対象です。
従来型抗リウマチ薬を中止するグループと、生物学的製剤を中止するグループの二つに分けて最長1年半追跡してみました。結局、再燃率はどちらのグループも特に違いはありませんでした。
「副作用のリスクや経済的な問題がなければ、両者とも継続したほうがよい」ということのようです。
それでは、再燃したときに治療を再開した場合のリカバリーの状況はどうだったでしょうか。これについては、従来型抗リウマチ薬の再開のほうが再び寛解の状態にもどった人が多いという結果でした。「従来型抗リウマチ薬のほうが、減量・中止の調整はやりやすい」といえそうです。
生物学的製剤の再度の投与にあたっては、先ほど述べました「抗製剤抗体」が作られてしまって、効果が悪くなってしまったのかもしれません。

日本リウマチ学会の2014年時点でのガイドラインでは、減量の優先度は、①ステロイド、②生物学的製剤、③従来型抗リウマチ薬、となっていました。
これはあくまで原則であり、実際にはケースバイケースです。主治医の先生と相談することが必要です。そのためには、良好なコミュニケーションが重要になってきます。

JAK阻害薬のオルミエント、ゼルヤンツを減量・中止できるか?

JAK阻害薬は、標的型合成抗リウマチ薬のグループに属します。注射ではなくて、内服ののみ薬です。注射に比べて簡便に使用できること、注射の生物学的製剤に比べても勝るとも劣らぬ効果を持っていることから、近年、使われることが増えてきている薬剤です。
しかし、現状では自己負担額は生物学的製剤よりもいささか高額で、この点からも、減量・中止できないかと考えていらっしゃる患者さんは少なくないと思われます。

オルミエントに関しましては、4㎎錠を1日1回服用するのが基本ですが、2㎎錠もあります。添付文書をみますと、「本剤4㎎1日1回投与で治療効果が認められた際には、本剤2㎎1日1回投与への減量を検討すること」となっています。もともと減量を考慮している薬剤なのです。

治験でのオルミエントの減量の成績をみてみましょう。3つの治験をまとめた報告です。
1年後の状態をみてみますと、そのまま4㎎を継続したグループでは、約9割の人が低活動性以下の状態を維持していましたが、2㎎に減量したグループでは、約8割となっています。4㎎のグループのほうが良い成績ですが、その差は大きなものではありません。
2㎎への減量は、十分に現実的な選択となるでしょう。

もう一つのJAK阻害薬であるゼルヤンツ(発売はこちらのほうが先です)については、中止が可能かをみた報告を紹介しましょう。わが国からの報告です(Rheumatology 2917;56:1293)。
リウマチを発症してから平均6年で、ゼルヤンツを平均4.2年服用し、低活動性以下の状態に到達した患者さんが対象です。
1年経過した時点で、どうだったでしょうか。そのままゼルヤンツの服用を継続したグループでは、なんと10割の人が寛解の状態を維持できていました。これに対して、ゼルヤンツを中止したグループでは、7割が寛解の状態でした。これはそれなりによい成績ではないかと思われます。
ゼルヤンツの中止については、まだ報告が少ないので、結論めいたことは申し上げられませんが、それなりの成功率はあるかもしれません。
ちなみに、この報告では、再燃してしまった後でゼルヤンツを再開した人は、全員が低活動性以下の状態にもどっています。従来型抗リウマチ薬と同様に、標的型抗リウマチ薬は、内服の低分子化合物ですので、生物学的製剤のように「抗製剤抗体」のリスクを考える必要がありません。その点で、減量・中止の調整がやりやすい薬剤といえるかもしれません。

おわりに

本日の話のまとめです。

#関節リウマチの治療の基本は、「現在の状態を正確に把握して、適切な治療目標を速やかに達成し、それを維持すること」

#治療目標の達成・維持のための主役は、「MTXなどの従来型合成抗リウマチ薬、生物学的製剤、JAK阻害薬」

#治療目標は、達成した後も、それを維持し続けることが大事です。不用意に治療を中止しないようにしましょう

#どの薬を使っているかにより、あるいは患者さんの状況によって、薬の減量・中止のリスクは異なります

#主治医とのコミュニケーションを円滑にして、治療について話し合いをしていきましょう

本日は、長時間にわたるお話にお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
それぞれの薬剤について踏み込んだ話であったので、理解しにくい点も多かったのではないかと思われます。それでも、ここまでの情報提供を患者さんに向かってすることは通常ではないことですので、それなりの意義はあったのではないかと考えています。

本日の私の話が、少しでも、ここにいらっしゃいます皆様のお役に立つことができたのであれば、これほど嬉しいことはありません。ご清聴いただき、ありがとうございました。