ナースのストーリー
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【所在地】
〒616-8255
京都府京都市
    右京区鳴滝音戸山町8
電話: 075-461-5121

一から勉強の日々

看護師 
私は、母のすすめもあって看護師になりました。看護師になってからは急性期の看護にたずさわり、結婚を機に知人のすすめで宇多野病院に勤務して、現在に至っています。
宇多野病院に来たころは、今まで勤めていた病院では経験したことのない疾患、症状に数多く直面し、とまどいの連続。重度身体障害児の看護経験はありましたが、意思疎通がうまくできない患者さんたちと「どう向き合っていくべきか」など、悩むことばかりでした。
教科書でしか目にしたことのない病気を患っている方たちと接するたびに、「この病は何だろう」「お薬は効くのだろうか」「治療法はどんなものなのか」と、一から勉強の日々。 看護では、「この患者さんは発病するまで、どのような生活を送っていたのだろう」「現実をどのように受け止めておられるのだろう」と考える毎日・・・。焦り、悔しさ、不安を抱えながら闘病しておられる患者さんの思いを、どのように受け止めていくべきか、迷いや悩みは尽きませんでした。
そんなとき、先輩からいただいた「患者さんができないこと、言えないことを感じる看護師になりなさい」という言葉に、ひとつの道筋を得たように思いました。

「待つ」ということの大切さを実感

以前は救急にいたので、バタバタと忙しいのが日常でした。もともとせっかちな性格なので、何か質問を投げかけるとすぐにレスポンスがあるのが当たり前のようになっていました。一刻を争うのですから、それが求められているというのもあったと思います。
しかし、ここではすぐに反応を示すことができない患者さんばかりなので、「待つ」ということの大切さを実感しています。心の中で「早く、早く」と思っていると、相手にもそれが伝わってしまいます。患者さんの部屋に入ったら雑念を消して、気持ちを落ち着かせ話しやすい環境を作るように心がけています。
またご家族の方は自分たちが不在のとき、患者さんがどのように過ごしているのか気にされています。「昨晩は熱もなく、穏やかでしたよ」と声をかけることで、少しでも心配ごとを減らすお手伝いができればと思っています。
医師からの説明がよく理解できず困っておられたら、わかりやすくお話するのも私たち看護師の役割です。患者さんやご家族の希望などを先生に伝えるのも、私たちができること。患者さんたちの胸の内にあるいろんな感情をくみ取り、不安の芽が小さいうちに摘み取っていきたいと考えています。

朗らかな姉妹との出会い

私の心に一番残っているのは、ご主人と同様の多系統萎縮症を発病し、最後までその人らしさを持ち続け一生懸命に生きたAさん(60歳 女性)のことです。
Aさんは、発病してから進行がとても早く、身体機能が低下した後は車椅子生活をしながらも2年間は夫の看病をされていました。 その後は寝たきり状態となり5年目でお亡くなりになりました。
お子さんがおられないため、Aさんが寝たきりになってからは、お姉さんがご主人とAさんを看病されていましたが、身体の自由が利かなくなった妹さんの髪を整え、肌を手入れするなど、献身的な介護をされていたのが印象的でした。言語聴覚士からマウスケアの指導を受け、朝・夕と欠かさずケアをされ、口の中がきれいに保たれていたので、何度か高熱を出されたものの、誤嚥性肺炎になることはほとんどありませんでした。

そのAさんが、寝たきりでおられたころのお話です・・・。
お姉さんはとても明るい方で、病室はいつもほんわりとした穏やかな空気に包まれていました。患者さんは妹らしくチャーミングなかわいらしさで、訪室するとこちらまで心が和むようでした。
除々に病状は進み、話すことが難しくなったので「伝の心」(通称でんのしん:コミュニケーションツール)を用いて、かすかに残る足の動きで操作し会話をされるようになりました。
あるとき私は患者さんに喜んでもらえることはないかと考え、ミサンガをプレゼントしました。「伝の心」を使って「ありがとう」と言ってくださり、私は軽い気持ちで「またお手紙をくださいね」と返しました。すると本当にお手紙を書いてくださったのです。
「芝さん、こんにちは。いつもお世話様。これからも宜しく。いつも早立ちせずにたまにはゆっくりと・・・ネ」
足の指を動かすのもつらい中、一文字一文字を綴ってくださったことをうれしく思うのと同時に、申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。きっと、お姉さんや旦那さんに伝えたいことがあったはず。限られた体力と時間を、私のために費やしてくださったことに、ただただ頭が下がりました。
そして「早立ちせずにたまにはゆっくりと」。この言葉に、ハッとしました。私は待つことができたと思っていたけれど、待てていなかった。「もっともっと、心の声に耳を傾けるべきだった」と自分自身の行動を省みました。

お二人の温かい人柄から多くのことを学んで

Aさんに季節を感じてほしいと思った私は、七夕には短冊をベッドに飾り、クリスマスにはイルミネーションの動画を見せて、春には桜を、秋には紅葉の写真を病室にお持ちしました。
中でも、60pもある大きなヒマワリを作ったときは姉妹で喜んで、窓に貼ってくださいました。お姉さんが、「これがあると体調がいいみたいなの」と話しておられたのが印象に残っています。またお姉さんは、それらのすべてを大事に取って置いてくださる優しい方でした。
2013年の年が明けて、Aさんはお亡くなりになりました。お姉さんから「妹はピンクが好きでおしゃれも上手。お花を愛していたし、歌舞伎鑑賞にも夫婦でよく出かけていたんですよ」と伺いました。もっと趣味や好きな物を聞いていたら、「癒しや励みとして日々の看護に生かすことができたのでは」と、これまでの取り組みについて深く考えることができました。
厳しい状況下でも朗らかな笑顔と気配りを忘れない、お二人の温かい人柄に触れて多くのことを学ばせていただいたことは、看護師として、一人の人間として心から感謝しています。
この学びをこれからの看護師としての人生に生かし、患者さんと常に向き合っていきたいと思います。



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